未熟な甲虫の呟き

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創作関係の呟き:己の気に入ってる一文を晒す2

 前回の「創作関係の呟き:己の気に入ってる一文を晒す」から一年半ぶりにこのタグで遊んだので、まとめておきます(記録魔
 興味を抱いてくださった方がいればと思って、小説タイトルからなろうのほうに(電子書籍のものは宣伝ページに)リンク貼っておきますね……(ちゃっかり


澱み、だ。朗の口からまたも溜め息がこぼれた。いっそ水から足を抜き、河原に上がればよかったのだ。もしくは流れに身を投じ、全力でそれに立ち向かうか。激流を恐れ、それでも未練がましく澱みに立ち尽くす朗の、身体のあちこちにこびりついた思念の欠片。それらが腐臭を放っている。(撞着する積木
posted at 2017/6/14 22:54:43

目隠しさえ取らなければ、たとえ其処が奈落に臨む絶壁の縁だったとしても、恐れる事は何一つ無い。断崖に目が眩む事もなければ、恐怖に足が竦む事だってないだろう。かりそめの平穏のもと、ただ無邪気に歩き続ける事が出来るというものだ。――足を踏み外す、その瞬間までは。(撞着する積木
posted at 2017/6/14 22:58:23

ヘレーは右手を差し伸べた。指先が微かに震えているのを自覚した。一旦手を引き左手で右手を握り締め、静かに深呼吸をしてから、もう一度右手を墓標へと伸ばした。(九十九の黎明・落花)
posted at 2017/6/14 23:06:30
これは紙本に収録する予定の掌編です(あからさますぎるダイマ
posted at 2017/6/14 23:07:35
 ※のちにタイトルを「夜をこえて」に変更。

柔らかな旋律(メロディ)が、慈雨のように大地に降り注ぐ。その歌声は、たっぷりと日の光を浴びた干し藁を思い起こさせた。山と積まれたふかふかの寝藁に身を投げだして、そっと目を閉じてしまいたくなる、穏やかな秋の日差しそのものだった。(九十九の黎明・第七章)
posted at 2017/6/14 23:14:02

足の下に広がる大地も緑なす森も、目に映るもの全てが悠久の時を刻む書庫となり、いのちを支える宝物庫へと姿を変えた。文字は、見えないものの姿をこの世に浮かび上がらせ、数字は世の理(ことわり)を紐解いてくれた。(九十九の黎明・第四章)
posted at 2017/6/14 23:16:50

拒絶されるのが怖くて、私はそれ以上何も訊くことができなかった。泣いていたことを誰にも言わないで、と掠れた声を漏らすユウカさんに、ただ静かに頷き返すことしかできなかった。でも本当は、彼女の悲しみを共有したかった。彼女の秘密を。(こきあけの衣)
posted at 2017/6/14 23:22:38

「違う」
ラグナが漏らした呟きを聞き、フェリアが怪訝そうに眉を寄せた。
「違うんだ。謝るべきはお前じゃない。俺、だ」
フェリアがラグナに向かっておずおずと手を差し伸べた。
温かい指先が、そっとラグナの頬を拭う。そこで初めて、ラグナは、自分が涙を流していることに気がついた。(紅玉~
posted at 2017/6/14 23:30:50

鉄錆の味が、ラグナの口の中にじわりと広がる。加護どころの話ではない。救済は勿論のこと、たとえ罰であろうと、今のラグナが神から賜ることのできるものなど、何も、無い。(紅玉摧かれ砂となる
posted at 2017/6/14 23:32:43

――勝気なのは、太刀筋と同じ、か。
思わず浮かび上がる笑みをなんとか押し殺して、アルノルドは、審判に食ってかかるロニーの前に右手を差し出した。ロニーが文句を口にするよりも早く、きっぱりと言いきる。
「これは、配慮ではありません。敬意です」(アルノルド・サガフィの帰郷
posted at 2017/6/14 23:41:52

高らかな靴音が小屋の壁にこだまする。風に翻った上衣の裾が、影の色を捨てて臙脂色に変わった。
「部下を返してもらおうか」
ルドス警備隊隊長エセル・サベイジは、静かに腰の剣を抜いた。褐色の前髪の下で切れ長の目がぎらりと光る。
「それとも、私が自分で取り戻したほうが良いかな」(黒の黄昏
posted at 2017/6/14 23:45:40

ひとしきり声を荒らげ、二人は互いに睨み合った。
怒りを、それもおのれ自身への怒りを他人にぶつけたところで、事態が好転するわけがないのは二人とも充分に解っていた。解ってはいたが、そうでもしないと気がおかしくなってしまいそうだったのだ。(九十九の黎明・第八章)
posted at 2017/6/14 23:47:11

悲鳴一つ上げず、ただ微かな唸り声のみを漏らした鉄錆色の髪の男を見て、エセルは小さく感嘆の声を上げた。
「伊達に、陛下に叛旗をひるがえしているわけではない、ということか」
「飼い犬の分際で、大きな口を叩くな。俺を誰だと思っている」(黒の黄昏・第十四話)
posted at 2017/6/14 23:49:51

瑞々しい風が頬を撫でる。
そこかしこで木々の葉が一斉に囁き、黄金(きん)の光が乱舞する。
若草、萌黄、常盤に青磁、濃いも薄いも、明も暗も、あらゆる緑が風を紡ぎ、木漏れ日を編む。
ふと、木立の遠くに人影を見たような気がして、ウネンは目陰(まかげ)を差した。(九十九の黎明・第十二章)
posted at 2017/6/14 23:53:34

「すまない。何も見なかったことにしてくれ」
 目元を覆うのは手のひらだろうか。ごつごつとした肌の感触が、ウネンの瞼を包み込む。触れられたところからじんわりと伝わってくる、オーリの体温。全てを覆い隠す、温かい、闇。
「訊かないでくれ。今は、何も」(九十九の黎明・第五章)
posted at 2017/6/15 12:40:51

誰よりも、彼は揺るがなかった。そして、誰よりも優雅だった。
甲矢を番える時の乙矢を握る指の動きも、弓構えから打ち起こす時の肩のラインも、ただ見つめるだけで心臓が高鳴るほどだった。弦や箟(矢の軸)を検める刃のような双眸に、ホノカの背筋は幾度となく震えた。(薄紅まといて
posted at 2017/6/16 08:18:42

鬱蒼と重なる針葉樹の梢が、空を覆い隠している。風に瞬く木漏れ日は、まるで蜘蛛の糸のようにか細く、地上に到達することなく大気中に拡散するばかり。鳥の声一つ聞こえぬ静まりかえった林の中、時すらも見失いそうな幽玄の世界に、切妻屋根の千木が静かに天を衝いていた。(薄紅まといて
posted at 2017/6/16 08:20:41

「その『維持保全』に信用が置けなかったら、どうすればいい? おのれに心地よい言葉にしか耳を貸さず、正しい知識をないがしろにするばかりか、誠実であろうとする者達を地に引き倒し、あまつさえ土足で踏みにじろうとする輩(やから)を、私はどうやって信じればいい?」(九十九の黎明・第十二章)
posted at 23:49:56

「あなたは……あなたという人は……」
「ああ、僕もね、目的のためには手段を選ばない人間なので」
 モウルが、悪びれもせずに肩をすくめた。
「ただ、まあ、自分が他人の足を引っかける以上、他人から足を引っかけられても文句を言わない覚悟はしてますよ。常にね」(九十九の黎明・第七章)
posted at 2017/7/25 09:34:03




 オマケ。
文章そのものがご馳走、って感じの流麗で美しい文に憧れてやまないんだけど、センスや語彙が圧倒的に不足している自覚があるから、ただひたすら、頭の中の情景をいかに無理なく的確に読み手に伝えるか、ということに腐心している。視覚以外の感覚情報や雰囲気とかも伝えることができたらいいなあ。
posted at 2017/6/16 08:36:07
ありがたいことに、私の文章について、端正、と言っていただけることはあるんだけれど、造作を整えるのと、きれいなかたちを作り出すのとは、根本的なところで違うと思う。残念ながら、私は芸術家にはなれなさそうなので、できる範囲でちまちま頑張っていきたい所存……。
posted at 2017/6/16 08:40:38
機能美、って言葉もあるしな……!!
posted at 2017/6/16 08:41:42

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