未熟な甲虫の呟き

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更新のお知らせやコメントへの返信、たまに管理人の雑談が交じります。

覆面作家企画8 参加作品の感想

 今更ながらの覆面作家企画8の感想です。
 A~Dブロックはツイッタで呟いたものの転載です。推理期間中に企画サイトの掲示板に書き込んではいたのですが、記録としてこちらにもまとめておきます。
 自分が潜伏していたEブロックについては、正解発表(7月8日)後に呟こうと思っていたものの、あれやこれやで実生活が立て込んでしまって、結局今になって直接この記事に記しているという次第です。
 いいねん、後夜祭だから。独り後夜祭。寂しくなんかない。

 感想は、未読の方への宣伝も兼ねてネタバレを避けたゆるーいものになっております。
 どれも6000字までの短編で、本っ当に面白い作品ばかりだったので、企画に参加しておられなかった方も、是非ご覧になってください!


A01 糸子教授の人生リセット研究所
「人生リセット装置」というパワーワードよ……。糸子教授の、上品で「純粋」な紙一重感がツボだった。なるほど、リセット。手は口ほどにものを言う。

A02 アフロディーテーの手
パートナーが遺した家事兼介護型AIを介して辿る思い出の日々。懐かしさや愛おしさといった想いとは別に、どこか張り詰めたような気配を感じるのは、AIの倫理規定のせいだろうか。
これを書いたのは、滑り込み組の人かな?とちょっと思った。

A03 導かれた先は
電車に揺られている兄と妹。妹にちょっとした推理を披露する兄といい、『怪人二十面相』を図書室で借りたという妹といい、二人とも前途有望(?)だw 兄の語る推理論に、覆面企画参加者としては姿勢を正さずにいられなかった。
「貴也」と「兄」の使い分けが気になる……

A04 地面に手が生えていた
タイトルのインパクトがスゴイ。書き出しもスゴイ。肘から先 オン ザ 夜の道。ホラーにしては雰囲気が軽い、でもうっすら汗かいてるとか、やっぱり怖い、と頭の中が大変なことになっている間に、あれよあれよと到達したオチは、別な意味で怖かったw
個人的に、女の子が用意した「いろんな道具」の詳細が気になるw 手が消えたあとの地面の様子も。
場面の区切りが「◇◇◇」……というのは、いくらでもフェイク入れられると思うから、手掛かりにはならなさそう。

A05 現代人外住宅事情
ガチなホラー来た! と思いっきり構えて読んだら、イイ感じに肩の力を抜かされました。ええ、イイ感じに……。作者さんの手のひらの上で踊らされた感。まさかのアップデート発言が好き。
服装の描写から、女性の作者さんかな、と思いました。って、全然絞り込めてねえ。

A06 魔女と秘密の88手
お化け屋敷と呼ばれながらも、庭が隠れんぼに絶好の場所として小学生に人気な無人の洋館。いいなあ、私もこういう場所で遊びたかった。一人称で、これみよがしな自己紹介が無いにもかかわらず、語り手の少年の外見から性格までもが自然と伝わってくるのがスゴイ。
最後の段落は、読者への挑戦状? 88に+8??? 今のところまったくピンと来るものがないので。他の方の感想や推理を参考にしつつ、あとで落ち着いて考えよう……。

A07 最果ての巫女
悪霊や魔物といった森の脅威から王国を守るため、うらびれた最果ての神殿に住まう巫女姫と、彼女が助けた魔物との、交流譚。台詞も描写も濃密で、文字数以上の物語が頭の中に注がれるのが気持ちいい。梟出生の様子を語るくだりとか、まるで舞台を見ているかのよう。
じっくりと執筆時間をとられた方なんじゃないかな、と思う。ていうか、このレベルの情報の取捨選択を、即興で、或は直感的に出来るとしたら、ほんとすごい。爪の垢ください。

A08 巡り巡って
親戚の話し合いの間、渦中の七歳のナツキを預かる、二回り以上年上のお兄さん。ゲームしたりお昼食べたり、ほのぼのとした二人の交流の隙間からチラ見える、なんとも入り組んだ人間関係に唸ってしまった。タイトルの意味はそういうことなのか……な?(自信なさげ

A09 手を貸した話
たかが夢、されど夢。手を貸してほしい(物理)って、怖いよ、絶対怖い。ですます調の語り口が実にイイ距離感で、最後にゾクリとさせられた。
文体、フェイクなんだろうなあ。謎の声を二重カギカッコで括るのも、あまり珍しくない手法だし。……つまり、何の手掛かりも見つけられなかった、と。

A10 ハンスと五本指の魔法
童話調の、とても上手くまとまった物語。「片手間」と言う善行に対する「片手程度の」手助け、という流れが楽しい。どんな魔法が助けてくれるのか、わくわくしながら読み進めた。楽しかった!
これも文体はフェイクだと思う……。副詞の「どんどん」を「どんどん『と』」って書いてしまっているのは、今回だけのうっかりミスか、それとも普段からそうなのか。

A11 黄昏時にその店は開く
子供の頃、料理するお母さんの手を「魔法の手」と思っていたという主人公が、今度は自分がその「魔法」をふるう。なんとなく、最近耳にする子供食堂ってこういう感じなのかな、と思った。そして、お腹がすきました。
単語の言い換えに使うダッシュ「――」は前側の一つだけ。でもこれもフェイクかも。


B01 ――ス・ガ・ル・テ
最初から最後までガチで怖いやつだった。無数の手が縋りついてくる克明な描写は、夜に読んだらアカンやつ。食い入るように読み進めるうちに、恐怖の質がじわりと変化していくのが、また怖い。幾重にも絡み合う感情は、物凄くドロドロしているけれど
構成が整っているので、読みやすかった。
タイトルのダッシュ「――」がSJISではないのは、ページ作成した主催さんの仕事なのか、作者さんの仕事なのか。

B02 フーガには二つ星を連ねて
いわくありげな古塚の前フリからの「退屈しのぎに昔がたり」。いいですね、こういう展開大好きです。物語の展開も、語り口も、雰囲気も好み。人ならぬものと生と死のふちで交わす契約。仮押さえっぽいあたり、随分と良心的だな、と思ったけれど名前がトリガーになっているのかな。「手」のくだりはもう少し読み込みたいところ。
句点のあとにスペースが挿入されているの、フェイク? 参加者の皆さんの最新作に、こういう書き方の作品は見つからなかったけど、見落としている?

B03 ジャクリーンの腕
義肢師の師匠と弟子と、高名なピアニストの物語。物語の構成がとても美しくて、これは是非とも、一切の予断無く読んでいただきたい……! 芸術とは、人間とは、といった深みにはまるのも心地よいです。我ながら、嗜好がだだ漏れですよ。いつものことです。

B04 マリー・アントワネットの手を取って
少女の怒濤の語りが、ほんと自然で、とても「らしく」って、小気味よい。過去を振り返り、更にここから前へ進むように、語られる彼女の言葉のなんと力強いことか。激動の時代を生きる、少し勝気な女の子の姿が見えるような気がした。

B05 赤い手 白い手
高台にある名家に引き取られた「ぼく」の物語。赤い手から、白い手へ、その劇的な転換が素晴らしい。視点を変えると景色はここまで違ってしまうのか。最後まで「ぼく」の名前が出てこないという事実が、とても切なかった。

B06 手児奈物語
時は平安(たぶん)、ゆえあって宮仕えを退いた真間君のもとに、風が届ける贈り物。漢詩だったり絵画だったり古歌だったり、このあたり、しっかりとした素養がなければ書けない物語だなあ、と感心しきり。優しい語り口が、春の景色と相まってとても素敵だった。
物腰穏やかで知的かつ理性的に見える三人なだけに、このあとの展開が大変気になります……気になります……!

B07 イハンスにやらせろ
ガラス工房の徒弟イハンス。タイトル回収に繋がる、とある事実が明らかになった瞬間がとても気持ち良かった! 思わず読み返して、伏線を確認してしまった。なるほどなあ。ガラス窯やパン窯の様子から世界観がしっかり伝わってくるのも楽しかった。

B08 花咲と白い犬
あやかし退治の跡継ぎの少女と、彼女が祖父から譲られた白い犬の物語。軽妙だったりシリアスだったり、と話の展開に合わせて変化する筆致に浸っていたら 全 裸 に全部持っていかれたw 初任給は結局どうなったんだろう。これも、このあとの展開が気になります!

B09 手の行く方へ
「君は手が歩くのを見たことがあるかい?」この書き出しに心が鷲掴みにされました。日常と非日常の垣根がほんのひととき緩む、民話や昔話みたいな物語。たまには仕事を意味なく休みたくなる時ってあるよね、あります(こぶしを握り締める)

B10 ローマでも長安でも洛陽でもない、ある都の休日
古代中国、つましい暮らしを送る李に突然届けられた召喚状は、傾国の妖姫によるものだった。本格的な歴史ものキターと思ったら、いきなり次段でびっくりしたw それでも、物語も雰囲気も最初の印象から一切変わらないのがスゴイ。
李と姫と、二人の考え方の違いが炙り出すのは、それぞれの生きざまであり、同時に、物語の舞台がどのような世界なのか、という確かな像。願わくば、彼と、彼女が、それぞれ幸せに天寿をまっとうできますように。
個人的に、見慣れた地名にニヤニヤしてしまったw

B11 手探りカデンツァ
夜の印刷室にて孤軍奮闘する新米教師と、風変わりな同僚との交流譚。あっけらかんとしているようで微妙に掴みどころのない同僚氏がいい味出してる。狼狽える主人公の心情がストレートに伝わってきて楽しかった。それにしても、就職前は印刷代はどうしていたんだろう?


C01 その手が隠したものは
「バカな、右手の紋章が効かない」「愚かなり人間よ」てな会話が繰り広げられるのは、昼下がりの銀行。こんな展開を見せられて、一気読みせずにいられるだろうか(反語)。中二病を絵に描いて額に入れネギと一緒に背負って50m全力疾走した気分です。楽しかった!

C02 月下鴨川、モノノケ踊りて、絵師が狩る。
江戸時代の天才絵師・月舟は、モノノケを画中に封じたという。現代の京都を舞台に、月舟の水墨画にまつわる、モノノケ退治(?)の物語。しっとりとした情景に情念を潜ませた描写が素敵。暗がりに色が落とされるさまに見入ってしまった。
「幼馴染み」という一言では言い表せない、「俺」と詩子さんの関係も良いです……良い……尊い……。

C03 死の手招き
淡々と語られる「私」の死生観は、同時に「私」の人生をなぞる物語でもあった。独白は時に脇道に逸れながらも、少しずつ死に近づいていく。怒濤のごとく押し寄せる文章に溺れてしまうかと思いきや、それはするすると喉を通り、すうっと心に沁みとおってゆくのが見事だった。
>その手招きを手繰り寄せ、その手に口づけをする。
この一文にシビれました……。

C04 なにも宿らない
ピアノを弾く。誰かに聞かせるためではなく、自分のために。手が届くと思っていた理想に到達できなかっただけでなく、それ以上手を伸ばすことを諦めざるを得なかった主人公の、自虐めいた心の叫びが胸を刺す。おおおお、この話むっちゃ好きだ!
自在に動く指に見惚れる気持ちは、分からなくもないw でも、たった一人のオーディエンスが、耳を傾けることがなかったとしても、それでも彼女の手は、音を生みだしているのだ。

C05 鏡の中にいて私の中にいなくてあなたの中にいるもの
真夜中の学校、旧校舎。鏡の前に立つのは、可愛らしい緋袴の巫女装束。中学生らしい語り口も相まって、ガチなホラーというよりも児童向けの怪談かな、と思ったら、水死体の手触りにゾゾっとした。主人公にとっての日常と「シロウトさん」(ここには読み手も含まれる!)のそれとのギャップが、言葉の端々から顔を覗かせる。その距離感が絶妙だった。

C06 憎たらしい愛にさながら
奥さんに先立たれた「私」の、思い出と後悔がぐるぐるな独白。いかにも一昔前の亭主関白っぽいし、最初っから強がってばかりだけれど、なんかもう、なんかもう。「悲しい」という言葉が一切使われていないのに、悲しみが胸に迫りくるのがすごいと思った。

C07 迷い子の手
三番目の王子と旅の楽師の内緒話、自分の気持ちを上手く言葉にできない王子の様子にほのぼのしていたら、一転二転する情景に引き込まれた。師匠いい人や…。最後、迷子の手に触れたのはやはり? 別な世界の二つの軌跡の、一瞬の邂逅に思いを馳せた。余韻が心地よくて好き。
(冒頭を読んだ瞬間、「J・ガイル!?」と思ってしまったJOJO脳をお許しください……)(ていうか、J・ガイルは右手やん……)

C08 ナインティーン・イレブン
埃っぽいストリート、田舎の町、午後のカフェ。夢を語る軽薄男やグラマーな恋人も、巻き起こる騒動も、実にアメリカドラマって感じがして楽しい。台詞回しもとても好き。因果応報、と溜飲を下げたところで、ラストシーンもドラマティックで心地よかった。
お金を貢いで、フライパンや鍋や雑貨が手元に残り、人を失った、って、アレかな……なんてちょっと思っちゃいましたね……。

C09 プディヤの祈りは銀の蝶になって
求婚のための危険な儀式に挑む従兄のために、祈りを込めて刺繍を施す少女プディヤ。〈大屋根〉や〈糸の姉妹〉といった一族の風習もとても興味深いが、何よりも刺繍に呪力を込める神聖なる祈りが、美しくて、幻想的で、とにかく最の高です。
プディヤの想いや惑いが手に取るように伝わってきて、すっかり物語に引き込まれました。従兄、むっちゃいい人だ。これは仕方が無いわー、よく頑張った、プディヤちゃん。全ての要素がストンと有るべきところに収まる気持ちよさ。ご馳走さまでした!

C10 奇病と難病
前書きで「おお?」っとなって、さてどんな架空の病気が待っているのかと思ったら、「奇病」に「難病」。こういう軸のずらし方、楽しいなあ! WEBは「目隠しの世界」というのは真理だと思う。目隠しを外した出会いが彼らに与えたものを、読み終えてからずっと考えている。

C11 トゥルーエンド
神託を受け、国を守るために命を捧げようとしている神子のもとに、それを思いとどまらせようとやってくる者。用意された複数の「エンド」、選ぶべき「ルート」という言葉がゲーム的なものを想起させるが、最後に広がった視界は、あまりにも壮大だった。
タイトルの「トゥルーエンド」もだけれど、世界観から敢えて外した単語が、神子の持つヒトならぬちからを強調しているような気がする。上手いなあ。


D01 秘密が見える目の彼女
他人が隠しておきたいと思っていることを見てしまう女生徒の、孤独の物語…と思ったら、視点も雰囲気もガラッと変わってしまうのが面白い。不良くんの純情(?)が微笑ましくて不憫で、でも、きっとこれからも彼はこんなふうに、彼女達に振り回されるんだろうなあ。

D02 神の庭
《神獣》に祖国を滅ぼされた男とともに荒野をゆくは、《神獣》の棲む《神遺領域》の門をひらくことができる娘。独特の世界観やドラマティックな展開に目が釘づけになった。世界の成り立ちからその在りようまでもがギュッと詰まってて、より壮大な物語を期待せずにはいられない。
物語は勿論、文章といい雰囲気といい、とても好き。神獣と対峙したディノが、かつての肩書きを名乗るところにグッときた。ディノに協力する条件としてリュミエレが挙げた三つ目の願いといい、二人は過去に生きているのだな。ディノの復讐が終わった時、彼らの関係はどうなっているのだろう。

D03 couturiere
独立開業した裁縫師さんにふりかかる無茶ぶりが、妙にリアリティがあって苦笑してしまった。そういう大事なことはきちんと申告してほしいなあ。するべき。しろ。「手」というお題の使い方、特に、話題がそこに収束していくところが見事だと思った。〆の一文がカッコイイ!

D04 子どもを助けたら勇者と呼ばれた件について
タイトルを見た時は人命救助の話かな、と思ったんだけど、異世界転生だった。自転車のブレーキが「踏む」ってなっているのは、推理の攪乱を狙ってかなあ。こっちもか、なタイトル回収が気持ちよかった。

D05 夢を視ないという夢
小さな子供の頃、寝つけない夜はおばあちゃんが優しく両手で目を塞いで寝かしつけてくれていた。夢心地も混ざった郷愁溢れる思い出話、からの、なんだお前ら友人とはいえ迷惑すぎるだろ、な展開に構えてしまった。怖いようで怖くないけど、やっぱりちょっと怖い。
これ、根本的な解決になってないやん、と思わずこのあとのことを心配してしまった。猫の喧嘩みたいに、目が合わなかったらセーフ、だったらいいな。ほのぼのとした思い出話がどこか幻想的に思えるのは、寝入りばなという彼我が曖昧になる時の記憶だからかな。その雰囲気がとても好き。上手いなあ。

D06 ヴォストーク・デイ
真夏の日本を襲う大寒波。ですます調の穏やかで平和な文章とは裏腹に、次第に状況が切羽詰まってくるの、そのギャップで余計に背筋がぞくぞくする。寒さの描写が半端なくて、涙目になりながら読んだ。寒いのはね、苦手なんですよ!
どうやったら助かるんだろう、どうすれば良かったんだろう。詮無いことをずっと考えてしまう。ラストシーンの意味を良いほうに捉えようと頑張っているところ。ペンギン可愛い→可愛いは正義→正義は勝つ……だから無事でいて……。

D07 オズ ―知識の光をもたらした魔女―
「その光はやがて世界を灼き尽くすだろう。それでも知識が欲しいかい」石積みの平屋が並び、竜が荷を運ぶ世界に、進んだ科学知識を持ち込んだ魔女。読み進めるうちに、当初思っていたよりも更に奥行きのある世界の姿が、少しずつ明らかになってくる、その様子が、とても興味深かった。こういうテーマも展開も大好き(分かりやすい嗜好)。魔女の最期の言葉が、胸を締めつける。

D08 嗚呼 美シキ兄妹愛哉
現代異能もの、そしてバディものだ! 過保護な兄&しっかり者な妹という取り合わせも大好物です! 登場人物のやり取りも楽しかったけれど、この世に存在してはならないモノや、それを取り除く方法など、設定も描写も特徴的でとても面白かった!

D09 てとてとて
童話調の語り口がとても柔らかくて優しいのに、必要以上に構えてしまうのは、企画の作品を読んできて、一筋縄ではいかない物語に多く出会ったからだろうな。テトちゃん何者? と、色んな可能性を思い浮かべてドキドキしながら読みました。……うん、怖くなかった。可愛い。
カメラのピントが合うように、次第にテトちゃんの像がはっきりしてくるの、楽しかった。

D10 吾輩はルンタくんである
ロボット掃除機ルン○(機種名)のルンタ(固有名詞)くん、出動! 彼の語りが無茶苦茶愛らしい。ちょっと堅苦しい吾輩口調で「オーナーにナデナデ」とか可愛すぎる。お掃除は勿論、恋の仲立ちまでしてしまうルンタくん、一瞬、真剣に購入を考えてしまった。


E01 銀の御手のサジタリウス
丁寧に言葉を選んで綴られたファンタジー。異端の子サジが試練に臨む、その心情も、〈聖なる山〉の情景も「獲物」の姿も、まざまざと目に浮かぶようなのに、「異端」の理由が明かされた瞬間、まだ更に広がる世界の姿に息を呑んだ。剣と花の例えは、まさにサジが背負い込んだ宿命なのだろうな、などと考えていたら、最後の幼馴染みの少女の台詞が胸を打つ。寄せては返す波のような情報の起伏がとても好みだった。

E02 五月の庭、蕾の君は目を閉じたまま
高校をサボって、〈緑の手〉を持つおじさんの家で羽を伸ばすあきらの、あの年頃特有のちょっと斜めに構えた語りにニヤニヤしてしまう。と思ったら、おじさんの仕事相手の美人な女性登場で「んん?」となった。もしかして「僕」って、もしかして? 慌てて最初から読み返し、一読目とはまたちょっと違った拗ねを感じとり、ニヤニヤも二倍。「簡単な話じゃない」と零すあきらに胸の痛みも感じたが、それでも〈緑の手〉がある限りは大丈夫なんだろうな。
タイトルの「君」は誰のことなのか、思いを馳せるのがまた楽しい。

E03 機械細工職人と機械義手
機械細工と呼ばれる歯車などの部品で作られる芸術品。それが、「絵画」や「彫刻」のように一つのジャンルを形成するほど人々に求められている、という世界そのものに魅せられた。アトリエの描写がまたツボで、萌えもイマジネーションも掻き立てられるわぁ。
機械油にまみれた工場で、師匠(予定)の加齢臭を嗅ぎ分ける主人公の嗅覚に一瞬びっくりしたけど、エピソードそのものは彼女の性格が端的に伝わってくるのが見事だなと思った。最後の一文でハッと始めに立ち返るの、すごく好き。

E04 飲み干す残滓
荒れ狂う熱情を吐き出さんばかりのモノローグにドキドキしていたら、どこにでもありそうな姉弟の日常へと場面が移り、平和な家族の会話が繰り広げられる。なのに不吉な予感を拭いきれないのは、タイトルと冒頭モノローグのちからだろうなあ。細かいエピソードが積み上げられていき、それでも、と一縷の望みをいだいて、いだいて……、ああ。こう、色々と悶えさせられる物語。

E05 キズアト
風紀を乱す夢を見たとして、生徒指導に居残りを命じられる主人公の女子高生。紙媒体の本が所持を禁じられているのは、ダウンロードコンテンツとして管理できないからなんだろうなあ。などとぼんやり考えながら読み進めるうちに、恐るべき管理社会の姿が次第に明らかになってゆく。ちょっとドキッとするような思わせぶりな出来事に一息つく間もなく、駄目押しのように体制の恐怖が押し寄せてきた、と思ったら。一変する世界。飛び交う専門用語が、変化をこれでもかと突きつけてくる。うわー、これ、すっごく気持ちいい! とてもいい! 彼女の決意に、喝采を!

E06 幕張でバーチャルアイドルミゾレと握手
タイトルを見た時から、ずーっとどんな内容か気になってた、の No.1。見るからにコメディっぽいタイトルで、おじさんとバーチャルアイドルという取り合わせには確かにコミカルな雰囲気もあるんだけど、なんかもう端々が物凄く心に沁みた。アイドルというものに無縁だった澤良木さんの、おっかなびっくりから夢中になっていく様子といい、トラブルに際しての心の揺れ動きといい、ディテールのリアルなこと。ついつい感情移入してしまって、ど忘れの瞬間には読んでいる私まで叫びそうになったよ……。良かった、本当に良かった。

E07 楽園の手
はい、これが私の書いたものでした。SA☆TSU☆BA☆TSU for you.
あとがきテンプレートにて色々語るつもりですので、お楽しみに!

E08 それは手記にも似た
「何か」が「私」のどこかに触れている。見ることも聞くことも動くこともできず、得体の知れない薄ぼんやりと明るい空間で漂うばかりの「私」が、唯一認識できることがそれだった。「何か」との僅かな繋がりを心の支えに、淡々と現状を、自分を分析続ける「私」の語りが実に切なくて、一体どうなっているのか、どうなるのか、固唾を飲んで読み進めたら、進めたら! 思いもよらないギミックに、目頭が一気に熱くなった。これは……途中までは救いになっていただろうが……終いのは……つらいなあ。

E09 夜の谷で
お使いの帰りに森で道を外れてしまった少年を助けたのは、いわゆる「勇者御一行」の一人だった。長く激しい戦いののち、世界を危機に陥れた魔獣を見事退治した、と伝えられるものの、一年経っても未だ帰ってこない勇者達。その理由が実に切なくて、彼らの胸中を想像するだけで胸がいっぱいになる。ていうか、剣士って聞いて最初は素直に(?)脳筋キャラを思い描いていたけど、かなり策士でCOOLだな??
秘密を分け与えられた少年は、これからどうするのだろう。真実はただ彼の中で静かに朽ちていくだけなのかもしれないな。寂しいけれど、それが相応しいようにも思えた。

E10 夢の異世界ダンジョンへGO!
タイトルを見た時から、ずーっとどんな内容か気になってた、の No.2。富士の裾野にオープンした日本最大のヴァーチャルリアリティ施設! ちょっと未来の「こんなゲームがあったら楽しそう」な夢をささえる、溢れんばかりの現実味がとてもいい。ハイテクも異世界ダンジョンも、元気と下心が有り余っている男子大学生にかかれば、カラオケやゲーセンでのバカ騒ぎと大して変わらなくなるのが実に趣き深い。やー、笑った笑った、こういうノリむっちゃ好き! 
ある意味、覆面企画に相応しい、とても楽しい締めくくりでした!


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